物理学系作家
ポスドクでは食っていけないから作家になった変わり種。
芥川賞選考で受賞作が石原慎太郎を激怒、離席させた人。
まぁ石原御大が激怒する気持ちもわからないではない、というより実験的ともいえる手法の小説が多いので読み手を選ぶ。
たとえばストーリーやプロットをピカソのキュビズムのようにバラバラにしたり、デフォルメして再構成したりといった具合。
ただこの人の場合、同時受賞した田中慎弥の既存の文学に対する一種のアンチテーゼなどではなく、「好きに書いたらこうなりました」という自然体がいい。
文学界のジョン・ケージかな。
代表作
基本的に文体の拙さは別としてほとんどの作家はデビュー作が原点であり至高だと思っているのでそういう意味で『Self-Reference ENGINE』は入門でありベスト
イベントによって時間的空間的に破壊された世界における人類と巨大知性体(コンピュータ)、それを俯瞰する超次元生命体を三人称視点からメタデフォルメしまくった連作短編小説。
連作一つ一つがミリタリー、歴史、ファンタジー、青春、ミステリ、私小説、落語、ホラー、小話etcと様々な手法で描かれているのが面白い。
ただ(これは円城作品全般に言えるが)何が言いたいのかわからない(笑)
メタ度・・・80点(いろんなパターンがあるので、楽しめる話が一つはあるはず)
難易度・・・60点(この小説が面白くなければ円城小説は全滅だと思います)
総評・・・90点(ストーリー(が崩壊しているというプロット)を理解してしまえば、あとは物語毎の様々な趣向を堪能できる)
『道化師の蝶』
芥川賞受賞
感想を書くのも難しい作品
ストーリーの着想(作中では蝶で比喩されている)を起草する(捕まえる)過程を描いた物語、とでもいうのかしら。
ちなみに当時自分がこの小説を読了できた理由は登場人物のA・A・エイブラムスと「スタートレック」や「アルマゲドン」「ミッションインポッシブル」の監督のJ・J・エイブラムスを名前だけ重ねていたからで、それが無ければ挫折していたかもしれませぬ。
難易度・・・95点(じっくり読んでも理解できないので斜め読みくらいがいいと思う)
芥川度・・・50点(怒りはしないが、円城塔が芥川賞受賞には自分も驚いた)
総評・・・60点(正直、当時読んでも今読んでもわからない。無理に解かろうとしてはダメなんだと思う)
『屍者の帝国』
星雲賞日本長編部門受賞
著者の盟友伊藤計劃の遺稿をもとに書かれた長編
イギリス、インド、日本を舞台にゾンビというか屍者蘇生技術を巡る暗闘を描いたスチームパンク風アドベンチャー小説。
俺は普通のエンタメも書けるんだ~、という著者の声が聞こえてきそうですが成功しているかどうかは微妙。
ジュブナイル度・・・80点(もうすこしミリタリーっぽくしてほしかった)
スチームパンク度・・・40点(世界観がスチームパンクである蓋然性がないのが残念、自分はスチームパンク好きなんでいいんですけどね)
総評・・・50点(円城塔のエンタメとしてはいいと思う。ただ伊藤計劃に無理に似せなかったほうがよかったかな)
『文字渦』
日本SF大賞受賞
すいません、読んでません。
でも間違いなく傑作でしょう。
とまぁ、こんな感じで代表作(と勝手に考えるている作品)中心に数作品レビューを簡単に書いていきたいと思います。
ただこの10年ほど読書から離れているので近著の感想が書けない・・・
作家単位でネタ切れしたときは作品単位でもっと細かく書くかもしれませんが、読み直す時間がないんですよね。