享年58、若すぎます。
ジュブナイル出身ということもあり本格派からは低くみられることもあったと聞きますが、佳作ながら純文学的作品からエンタメ実験小説まで幅広い分野の作品を上梓されていました。
自分はオッサンなのでベストセラー『ブラバン』など青春ジュブナイルは読まないということもあり主にSF、ホラー、幻想系小説でお世話になりました。
飄々として流れるような展開や第三者的なそっけない文体が個人的に好きでした。
合掌
ということで、2、3書評というか感想を。
といっても十年来読んでいないので記憶もあいまいですが、逆にそれでも鮮烈に覚えている作品もあるわけで、やはりよいものはよい。
ちなみに短編集ばかりなのは、津原氏の長編はあらすじの説明が難しく感想も曖昧になってしまい纏めきれないからです。
「バレエ・メカニック」や「赤い竪琴」なども面白かったです。
『蘆屋家の崩壊』など(幽明志怪シリーズ)
津原泰水入門にはもってこいの短編集
『蘆屋家の崩壊』『ピカルディのバラ』『猫ノ目時計』の三冊
主人公の猿渡(作者本人もしくは祖父がモデル)と友人作家の伯爵(井上雅彦)が行く先々で怪異のようなものに遭遇するストーリー。
「猫背の女」に恐怖し「水牛群」の美しさに心奪われ「フルーツ白玉」にノスタルジーを感じ「城と山羊」であっけに取られる。
一つ一つの短編が珠玉です。
二作目の短編集(全十一篇)
なんといっても白眉は「五色の舟」
基本的に氏の小説は読者を選びますが、この小品だけは万人にお勧めできます。
初出の「NOVA2」のほうで読みましたが、短編ながら直木賞取れるんじゃないかと当時思いました。
見世物小屋とそこに売られてきた「件(くだん)」を巡るストーリーですが短編ながら主人公含めて住人たちのキャラがみんな立っていて、個々の生い立ちを連作にして読んでみたいと思わせる、そして泣ける。
オススメです。
『綺譚集』
第一短編集(全十五編)
おもに異形シリーズからの出典が多く、私もそっちのほうでお世話になりました。
「聖戦の記録」・・・ヒロスエリョウコやカンノミホやソリマチタカシなど、どこかで聞いた登場人物が多数出てくる静かな猟奇短編ですが、こういう風に人物名を使うと簡単にキャラ立ちが出来て便利だなと感心しました。
「隣のマキノさん」・・・作家の牧野修特集に書き下ろされたもの。
近所に住む牧野さんの庭に咲き乱れる曼殊沙華の中から現れた牧野さんと挨拶するだけの短編ですが、牧野修の猟奇的な作風を知ってる読者は想像を掻き立てられます。
捻りもなにもないので読みやすい。
ちなみに個人的な現役日本三大猟奇作家は「平山夢明」「牧野修」「友成純一」ではないでしょうか。三人とも悪い意味でタガが外れてます。
なお、作家の百田尚樹氏との論争が話題になっていますが、基本的にの手の論争は第三者が外から論じても意味がなく当事者や出版社どうしで解決するものなので個人的に全く興味はありません。
が、メディアが氏の死去報にまで論争を話題に出すのは如何かと思います。